世界守ろうぜ

 

あんたに……あんたに何がわかるのよ!!!

俺はわかってるつもりだオラァ!!!

 

それは、とてもとても悲しいことだった。

 

 

ある日、彼は旅立った。

監獄という名の地獄から。

そして彼が行きついた場所は、とある小屋。

「やっと来たか……。お前はこうするしかないのだ…。」

髪は白髪で、顔は衰弱しきった男がこちらを向いた。

光がなく、曇り空だったことで顔は確認できない。

「では、はじめよう」

 

 

 

 

 

「ぐあぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 

 

 

彼は人を殺したことがある。

その償い………。

 

 

 

「俺……あぁ、ヤツにあれをされて……眠ったのか?」

目の前には男の覗き込む顔。

「あぁ、旦那様。お目覚めになられましたか。ひどくうなされていたもので、心配で心配で」

「…………なんでもない」

今日は晴天。

小鳥はさえずりで合唱をしている。

 

 

――前夜

「成功だ……。素晴らし……はぁ、ぁぁ……計算どおりだ………」

空は雨模様。

小屋は電気がなく、暗い。

白髪の男はベッドに横たわる人を口元に笑みを浮かべて見つめる。

そして………

 

「………ウガゥ……」

 

ドサッ

 

 

 

 

「本日の予定は、天皇陛下との会談の後、滞在中のアメリカ外交官との昼食会、お嬢様のピアノの発表……どうされました?」

「いや…なんでもない」

「今日の旦那様、何か変ですよ。顔色が悪いいま…」

「なんでもないと言っているだろう!!!」

 

 

 

 

 

いやだ……最初からヤツは私を……あぁ…くそ…。

 

 

 

 

 

 

旦那様、の名はロイド・アルファード。

彼の経営する会社、アルファードコーポレーションは世界的大企業だ。

 

 

 

そして、旦那様になった者名はアスカ・スミス

あの女性を殺し、監獄に入れられて10年、そして釈放された。

白髪の老人。

彼は世間から見放された化学研究者、ジョナサン・アルマチスタだ。

そう、スミスに殺された女性の祖父だ。

彼に託されたのは「この世界の命運」

気が付くと、そこはロイドの自宅。

スミスはロイドに。

ロイドはスミスになった。

スミスになったロイドは眠っている。

 

 

 

 

 

「……今すぐハワイへ飛ぶ」

「はい?旦那様、これからの御予定は…?」

「すべてキャンセルに決まっているだろう!」

私は、目的を果たさなければ戻れないのだから……。

そう信じてハワイへと向かった。

 

 

 

『……はぁ……あっちの世界のハワイに行けば………道しるべが………グァァ…………進むべき方向を教えてくれる……』

 アルマチスタは、スミスをこちらの世界へ飛ばす前にそう言った。

 

 

道しるべ……。

 

 

 

「よっ、スミスさん。待ってましたぜ……。ついてきてくださいな」

 「道しるべ」が、空港の人込みで彼の耳元で囁いた。

彼は同行していた執事の前から姿を消し、道しるべの後を追った。

 

 

 

 

「こ、これは………世界まるごとふっばすことができるのではないか…?」

彼は目の前に広がる巨大な核兵器におびえた。

 

「あぁ……これは今アメリカ軍がつくってるものだ。あの門のようなものの向こうには、あんたのすむ世界がある」

道しるべは、そう言った。

「発射は明日なんだ。もし撃たれたら、あっちの世界は壊滅だろうなァ………」

 

 

 

(話が違うではないか、ジョナサン!道しるべは進むべき方向を教えてくれると言ったが……もう手遅れではないのか………!?)

 

(まさか………?)

 

 

 

 「こいつを………撃てるのか?」

彼は答えをあまり期待しなかった。

だが

 

 

 「俺がなんとためにいると思っている?制御なんてお手の物だ」

 

 

 

 

彼は巨大な核兵器を手に入れた。

 

 

 

 

だがこんなものをどうすれば………。

ジョナサンの言葉が脳裏をよぎる。

彼は3年前、面会にやってきてこう言ったのだ。 

 

 

 

「天へと登るる龍は、やがて太陽で消滅し、世界を救うであろう……」 

 

 

「天へと登るる龍は、やがて太陽で消滅し、世界を救うであろう……」 

 

 

「天へと登るる龍は、やがて太陽で消滅し、世界を救うであろう……」 

 

 

彼はそう言って、小屋の住所を書いた紙を渡して、去った。 

 

 

「天へ向けて発射してくれ……」

「それが正解だよ、スミスさん」

そして、天へと登った龍は、太陽で消滅した。 

その瞬間、真っ暗に………。 

 

 

 

そして彼はアスカに戻った。

アスカはロイドに。

前のままになった。

 

だが、ロイドは、あの計画の首謀者だったことが発覚、終身刑となった。

 

 

 

人は小屋で起きた。

そしてつぶやいた。

そばに横たわる白髪の男に向けて、ただ一言

 

「世界を……救った……」

 

と。

fin

 

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