■世界守ろうぜ
あんたに……あんたに何がわかるのよ!!!
俺はわかってるつもりだオラァ!!!
それは、とてもとても悲しいことだった。
ある日、彼は旅立った。
監獄という名の地獄から。
そして彼が行きついた場所は、とある小屋。
「やっと来たか……。お前はこうするしかないのだ…。」
髪は白髪で、顔は衰弱しきった男がこちらを向いた。
光がなく、曇り空だったことで顔は確認できない。
「では、はじめよう」
「ぐあぁぁぁぁぁぁ!!!」
彼は人を殺したことがある。
その償い………。
「俺……あぁ、ヤツにあれをされて……眠ったのか?」
目の前には男の覗き込む顔。
「あぁ、旦那様。お目覚めになられましたか。ひどくうなされていたもので、心配で心配で」
「…………なんでもない」
今日は晴天。
小鳥はさえずりで合唱をしている。
――前夜
「成功だ……。素晴らし……はぁ、ぁぁ……計算どおりだ………」
空は雨模様。
小屋は電気がなく、暗い。
白髪の男はベッドに横たわる人を口元に笑みを浮かべて見つめる。
そして………
「………ウガゥ……」
ドサッ
「本日の予定は、天皇陛下との会談の後、滞在中のアメリカ外交官との昼食会、お嬢様のピアノの発表……どうされました?」
「いや…なんでもない」
「今日の旦那様、何か変ですよ。顔色が悪いいま…」
「なんでもないと言っているだろう!!!」
いやだ……最初からヤツは私を……あぁ…くそ…。
旦那様、の名はロイド・アルファード。
彼の経営する会社、アルファードコーポレーションは世界的大企業だ。
そして、旦那様になった者名はアスカ・スミス
あの女性を殺し、監獄に入れられて10年、そして釈放された。
白髪の老人。
彼は世間から見放された化学研究者、ジョナサン・アルマチスタだ。
そう、スミスに殺された女性の祖父だ。
彼に託されたのは「この世界の命運」
気が付くと、そこはロイドの自宅。
スミスはロイドに。
ロイドはスミスになった。
スミスになったロイドは眠っている。
「……今すぐハワイへ飛ぶ」
「はい?旦那様、これからの御予定は…?」
「すべてキャンセルに決まっているだろう!」
私は、目的を果たさなければ戻れないのだから……。
そう信じてハワイへと向かった。
『……はぁ……あっちの世界のハワイに行けば………道しるべが………グァァ…………進むべき方向を教えてくれる……』
アルマチスタは、スミスをこちらの世界へ飛ばす前にそう言った。
道しるべ……。
「よっ、スミスさん。待ってましたぜ……。ついてきてくださいな」
「道しるべ」が、空港の人込みで彼の耳元で囁いた。
彼は同行していた執事の前から姿を消し、道しるべの後を追った。
「こ、これは………世界まるごとふっばすことができるのではないか…?」
彼は目の前に広がる巨大な核兵器におびえた。
「あぁ……これは今アメリカ軍がつくってるものだ。あの門のようなものの向こうには、あんたのすむ世界がある」
道しるべは、そう言った。
「発射は明日なんだ。もし撃たれたら、あっちの世界は壊滅だろうなァ………」
(話が違うではないか、ジョナサン!道しるべは進むべき方向を教えてくれると言ったが……もう手遅れではないのか………!?)
(まさか………?)
「こいつを………撃てるのか?」
彼は答えをあまり期待しなかった。
だが
「俺がなんとためにいると思っている?制御なんてお手の物だ」
彼は巨大な核兵器を手に入れた。
だがこんなものをどうすれば………。
ジョナサンの言葉が脳裏をよぎる。
彼は3年前、面会にやってきてこう言ったのだ。
「天へと登るる龍は、やがて太陽で消滅し、世界を救うであろう……」
「天へと登るる龍は、やがて太陽で消滅し、世界を救うであろう……」
「天へと登るる龍は、やがて太陽で消滅し、世界を救うであろう……」
彼はそう言って、小屋の住所を書いた紙を渡して、去った。
「天へ向けて発射してくれ……」
「それが正解だよ、スミスさん」
そして、天へと登った龍は、太陽で消滅した。
その瞬間、真っ暗に………。
そして彼はアスカに戻った。
アスカはロイドに。
前のままになった。
だが、ロイドは、あの計画の首謀者だったことが発覚、終身刑となった。
人は小屋で起きた。
そしてつぶやいた。
そばに横たわる白髪の男に向けて、ただ一言
「世界を……救った……」
と。
fin
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